『80億分の1』の赤ちゃん方式で日本に生まれる確率は0.57%、176人に1人。今生まれる赤ちゃんの3人に1人はアフリカ【国連統計で検算】

Xで「#80億分の1」というハッシュタグが流れてきた。世界の誰かとして生まれ、死ぬまでを体験する無料のブラウザゲームだ。生まれる国も家庭も選べない。

遊んだ人の投稿には、日本以外の国に生まれたという報告も目につく。では、日本に生まれるのはどのくらい珍しいのか。

そこで、ゲームが使っている国連のデータを自分で集計して、日本に生まれる確率は本当はいくつなのかを計算した。なお、この記事はゲームの体験談ではない。誰でも同じデータで確かめられる数字だけを書く。

先に結論

  • ゲームには、生まれる国の決め方が2つある。「今生きている80億人」から選ぶ方式と、「今生まれている赤ちゃん」から選ぶ方式だ。
  • 日本に生まれる確率は、人口で選ぶと1.54%(65人に1人)、赤ちゃんで選ぶと0.57%(176人に1人)。方式によって約2.7倍違う。
  • 赤ちゃんで選ぶ方式だと、アフリカ生まれが約35%(約3人に1人)になる。高所得国に生まれるのは約9%(11〜12人に1人)だけだ。
  • 5歳になる前に亡くなる子どもは、2023年に世界で約480万人いた。生まれた子ども全体の約3.6%(28人に1人)に当たる。

数字は国連の人口推計(2023年)を集計した目安。ゲーム内の実際の抽選とは少しずれる可能性がある。

『80億分の1』はどんなゲームか

話のネタ

『80億分の1』(英語名は1 in 8 Billion)は、個人開発者のJin Hwi-eus氏(AUTOMATONによると仮名)が2026年10月5日に公開したブラウザゲームだ。料金は無料で、現在はベータ版として公開されている。

AUTOMATONの記事によると、開発者はもともと公開するつもりがなかった。Threadsに投稿したところ話題になり、ドメインを取って公開したという。最初の指示をAIに入力してから公開まで、約4時間だったそうだ。

ゲームの中身は次のとおり。

  • 生まれる国・両親・家の豊かさは、統計に基づいてランダムに決まる。
  • 進学・仕事・結婚・出産などの分かれ道では、プレイヤーが選ぶ。
  • 健康・幸福・知識・人間関係が数値で表示され、選択や環境で変わる。
  • 病気や紛争で、突然人生が終わることもある。
  • 「自分と同じ1秒に生まれた4人」の人生も見られる。

死や病気、暴力の描写があるため、公式サイトでは15歳以上向けとしている。

公式サイトによると、データは172か国分。出典は国連の世界人口推計(World Population Prospects 2024)、国連の子ども死亡推計(UN IGME)、世界銀行、WHO、ユネスコなどだ。

生まれる国の決め方は2種類ある

ここが、この記事でいちばん大事な点だ。公式サイトには、生まれる国の決め方が2つ書かれている。

  • 「今生まれている赤ちゃん」方式: 1年間に生まれる赤ちゃんの数に比例して、国が選ばれる。
  • 「今生きている80億人」方式: 今の人口に比例して、国が選ばれる。

一見すると、どちらでも同じに思える。人口が多い国は、生まれる赤ちゃんも多いはずだからだ。

ところが、実際は大きく違う。理由は、国ごとに「人口に対して、どれだけ子どもが生まれているか」が違うからだ。

日本は人口が多い一方で、子どもが少ない。人口の割に赤ちゃんが少ない国は、赤ちゃん方式だと当たりにくくなる。逆に、若い人が多く子どもがたくさん生まれる国は、赤ちゃん方式で当たりやすくなる。

国連データで計算した、生まれる国の確率

国連の世界人口推計2024年版(Our World in Dataで公開されている版)から、2023年の出生数と人口を236の国・地域について集計した。出生数が多い順に並べると次のようになる。

順位 国 年間出生数 赤ちゃん方式 人口方式
1 インド 2,322万人 17.6%(6人に1人) 17.8%(6人に1人)
2 中国 890万人 6.7%(15人に1人) 17.6%(6人に1人)
3 ナイジェリア 751万人 5.7%(18人に1人) 2.8%(36人に1人)
4 パキスタン 688万人 5.2%(19人に1人) 3.1%(33人に1人)
5 インドネシア 448万人 3.4%(29人に1人) 3.5%(29人に1人)
6 コンゴ民主共和国 437万人 3.3%(30人に1人) 1.3%(76人に1人)
7 エチオピア 411万人 3.1%(32人に1人) 1.6%(63人に1人)
8 アメリカ 366万人 2.8%(36人に1人) 4.2%(24人に1人)
9 バングラデシュ 349万人 2.6%(38人に1人) 2.1%(47人に1人)
10 ブラジル 260万人 2.0%(51人に1人) 2.6%(38人に1人)
39 日本 75万人 0.57%(176人に1人) 1.54%(65人に1人)
81 韓国 24万人 0.18%(559人に1人) 0.64%(156人に1人)

国連の世界合計では、2023年に約1億3,211万人が生まれ、人口は約80億9,173万人だった。

表から分かることは3つある。

1つ目は、中国の差が大きいこと。人口方式ではインドとほぼ同じ6人に1人だが、赤ちゃん方式では15人に1人まで下がる。中国の出生数は、人口がほぼ同じインドの4割ほどしかない。

2つ目は、アフリカの国が上がってくること。ナイジェリアは人口では世界6位だが、出生数では3位になる。コンゴ民主共和国は人口15位から出生数6位に上がる。

3つ目は、日本が大きく下がること。人口では世界12位だが、出生数では39位になる。赤ちゃん方式で日本を引く確率は、人口方式の約2.7分の1しかない。

赤ちゃん方式なら、日本を引くのは176回に1回だ。日本以外に生まれるのが、ふつうの結果ということになる。

地域で見ると:赤ちゃんの3人に1人はアフリカ

国ではなく地域や所得で見ると、差はもっとはっきりする。

区分 赤ちゃん方式 人口方式
アフリカ 34.9%(約3人に1人) 18.3%(約5人に1人)
アジア 49.7% 59.0%
ヨーロッパ 4.8% 9.2%
低所得国 19.1%(約5人に1人) 9.0%(約11人に1人)
高所得国 8.7%(11〜12人に1人) 17.5%(約6人に1人)

※所得区分は世界銀行の分類(Our World in Dataの集計)。

赤ちゃん方式だと、アフリカに生まれる確率は約35%。人口方式の約2倍になる。一方、高所得国に生まれる確率は8.7%で、人口方式の半分だ。

つまり「今この瞬間に生まれる赤ちゃん」の世界は、「今生きている人」の世界よりずっと若く、ずっと貧しい側に寄っている。公式は統計に基づいて生まれる国を決めると説明しているので、赤ちゃん方式ではこの偏りが背景になると考えられる。

「同じ1秒に生まれた4人」は現実の出生ペースに近い

ゲームには、自分と同じ1秒に生まれた4人の人生が表示される機能がある。この「4人」も計算で確かめられる。

2023年の出生数は約1億3,211万人。1年は約3,154万秒なので、1秒あたり約4.2人が生まれている計算になる。ゲームの「4人」がこの計算から決められたのかは分からないが、実際のペースに近い数字だ。

5歳までに亡くなる子どもは28人に1人

AUTOMATONの記事で、開発者は「児童死亡率3%」という数字を例に挙げている。統計の数字を、1人の人生として実感してほしい、という意図だ。

実際の数字も確認した。ユニセフによると、2023年に5歳の誕生日を迎える前に亡くなった子どもは、世界で約480万人だった。このうち約230万人は、生まれて28日以内の赤ちゃんだ。

同じ年の出生数約1億3,211万人で割ると、約3.6%になる。28人に1人の計算だ。(亡くなった子どもの中には前年以前に生まれた子も含むため、あくまで目安。)

学校の1クラスを28人とすると、5歳までに1人がいなくなる計算になる。ゲームで突然人生が終わる場面の背景には、この確率があると考えられる。

日本を引く確率は、50年で3分の1になった

ゲームには「過去」の世界を選ぶモードもある。そこで、日本に生まれる確率が昔はどうだったかも計算した。同じ国連データで、赤ちゃん方式の確率を比べる。

年 日本の出生数 世界の出生数 日本に生まれる確率
1973年 218万人 1億2,356万人 1.77%(57人に1人)
2000年 120万人 1億3,576万人 0.88%(113人に1人)
2023年 75万人 1億3,211万人 0.57%(176人に1人)

世界の出生数は、この50年でほとんど変わっていない。変わったのは日本の出生数の方だ。第2次ベビーブームの1973年なら57人に1人だった確率が、今は176人に1人になっている。

なお、国連の推計値は、日本の厚生労働省の統計とは数え方が違う。厚労省の人口動態統計では、2025年に日本で生まれた日本人は67万1,270人(確定数)で、10年連続で過去最少だった。この数字を2023年の世界の出生数で割ると、目安として約0.5%になる。

計算するときの注意点

この記事の数字は、ゲームの中の抽選そのものではない。ずれる理由は3つある。

  • 対象の国の数が違う。ゲームは172か国、この記事は国連データの236の国・地域で計算した。小さな国や地域を含むかどうかで、分母が少し変わる。
  • 年が違う可能性がある。この記事は2023年の推計を使った。ゲームが2024年以降の推計を使っていれば、割合は少しずれる。
  • 能力値は結果を決めない。公式サイトには、能力値は確率を上げるだけで、結果を決めるものではないとある。同じ国に生まれても、人生の結果は抽選で変わる。

それでも、大きな傾向は変わらない。赤ちゃん方式では日本を引くのは約176回に1回で、アフリカは約3回に1回だ。

まとめ:どちらの方式で遊ぶかで、見える世界が変わる

  • 『80億分の1』は、生まれる国を「人口」か「出生数」のどちらかに比例して選ぶ。
  • 日本に生まれる確率は、人口方式で1.54%(65人に1人)、赤ちゃん方式で0.57%(176人に1人)。
  • 赤ちゃん方式では、約3人に1人がアフリカに生まれる。高所得国は11〜12人に1人。
  • 5歳までに亡くなる子どもは約3.6%(28人に1人)で、開発者の「3%」とほぼ同じ規模だ。
  • 日本を引く確率は、1973年の57人に1人から、50年で約3分の1になった。

「今生きている人」の世界を見たいなら人口方式、「これから大人になる世代」の世界を見たいなら赤ちゃん方式を選ぶといい。同じゲームでも、どちらを選ぶかで出てくる人生の傾向がはっきり変わる。

ゲームで日本に生まれなかった人は、運が悪かったわけではない。176分の175の、ふつうの結果を引いただけだ。

出典

関連記事

共働きの家事分担、夫の時間は15年で2倍。なのに妻との差は1分も縮んでいなかった【国の統計】

共働きの家事分担、夫の時間は15年で2倍。なのに妻との差は1分も縮んでいなかった【国の統計】

「最近は、夫もけっこう家事をやってくれるようになった」 そう感じている共働き家庭は多いと思います。 国の統計を見ても、そ…

何者にもならない勇気─コジコジ哲学が現代人を救う理由【きなこらむ】 

何者にもならない勇気─コジコジ哲学が現代人を救う理由【きなこらむ】 

ちょっとした時間のちょっと小話。 意味があるのかないのか知識沼KINAKOが最近のことをコーヒーでも飲みながら。 本日の…

【4年目の告白】荒削りな記録と、これから - 生活改善、ハムスター、そして節制への挑戦

【4年目の告白】荒削りな記録と、これから - 生活改善、ハムスター、そして節制への挑戦

きなこKINAKOです。X(日常更新多め)、をやってます。 気づけばブログを書き始めて4年が過ぎました。 生活の中で感じ…

おすすめ(おもろいの)

-話のネタ

© 2026 KINAKOの割りと優雅な節約