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結論:その場で払う必要があるのは「不合格になる項目」だけ
車検の見積もりで金額がふくらむ原因は、ほとんどが「追加整備」です。法定費用のうち重量税と自賠責は、どの店で受けても同じ金額だからです。
追加整備は、大きく2種類に分かれます。
- 必須:今の状態だと保安基準(国が決めた車の安全・環境の基準)に合わず、車検に通らない項目
- 推奨:今は基準を満たしているが、近いうちに劣化や故障が心配な項目
車検に通すためだけなら、必要なのは「必須」の項目です。「推奨」は、時期や依頼先を自分で選べます。
ただし、推奨を「無視してよい項目」と読むのは間違いです。法律上、車を基準に合う状態に保つ義務は「使用者」(ふだん車を使う人)にあります。ローンやリースの車では、車検証の所有者と使用者が違うこともあります。この記事では、法定費用の正確な金額と、見積もりの読み方を順番に整理します。
重量税と自賠責はどこでも同じ。2026年11月時点で1.5t以下の車は約4.5万円から
法定費用とは、国や保険会社に納める決まった費用です。中身は次の3つです。
- 自動車重量税:車の重さに応じて国に納める税金
- 自賠責保険料:法律で加入が義務づけられた保険の料金
- 検査手数料:検査を受けるための手数料(印紙代と呼ばれることもあります)
重量税と自賠責は、どの店で受けても金額が変わりません。検査手数料だけは、受け方によって金額が違います。
2026年11月7日時点で適用される金額を、国土交通省と金融庁の資料で確認しました。自家用の乗用車で、エコカー減税の対象ではない車の場合です。検査手数料は、指定工場(民間車検場)に頼んでOSS申請する場合の金額で計算しています。
| 車の種類 | 重量税(2年) | 自賠責(24か月) | 検査手数料(指定工場・OSS申請) | 合計 |
|---|---|---|---|---|
| 軽自動車 | 6,600円 | 18,660円 | 1,850円 | 27,110円 |
| 登録車 1t以下 | 16,400円 | 18,560円 | 1,850円 | 36,810円 |
| 登録車 1.5t以下 | 24,600円 | 18,560円 | 1,850円 | 45,010円 |
| 登録車 2t以下 | 32,800円 | 18,560円 | 1,850円 | 53,210円 |
重量税は、2026年5月1日から2028年4月30日までの税額表の金額です。自家用乗用車は、車両重量0.5tごとに8,200円(2年分)が加わります。
登録車とは、普通車(3ナンバー)と小型車(5ナンバー)をまとめた呼び方です。
指定工場とは、国の指定を受けて工場の中で検査までできる整備工場で、多くのディーラーが該当します。OSS申請とは、指定工場がオンラインで行う手続きのことです。指定工場でも窓口で申請すると、手数料は2,100円になります。
一方、指定を受けていない認証工場に頼む場合や、ユーザー車検の場合は「持込検査」になります。手数料は普通車2,600円、小型車と軽自動車は2,500円です。この場合、表の合計より650〜750円高くなります。
エコカー減税の基準を満たす車は、重量税が安くなるか免税になります。自分の車の正確な税額は、国土交通省の「次回自動車重量税額照会サービス」で調べられます。
自賠責は2026年11月1日から値上がりした
自賠責保険料は、保険期間が2026年11月1日以降に始まる契約から上がりました。報道によると、自賠責の引き上げは約13年ぶりです。
- 自家用乗用車(24か月):17,650円 → 18,560円(910円増)
- 軽自動車(24か月):17,540円 → 18,660円(1,120円増)
損害保険料率算出機構によると、新しい料金は保険期間が2026年11月1日以降に始まる契約に適用されます。手続きをした日ではなく、保険が始まる日で決まるということです。金額は沖縄県と離島を除く地域のものです。車検の時期によっては24か月以外の期間で契約することがあり、その場合は金額が変わります。
検査手数料も2026年4月1日に上がった
検査手数料は、2026年4月1日に改定されました。継続検査(2回目以降の車検)の金額は次の通りです。
| 受け方 | 改定前 | 2026年4月以降 |
|---|---|---|
| 整備工場経由・OSS申請 | 1,600円 | 1,850円 |
| 整備工場経由・窓口申請 | 1,800円 | 2,100円 |
| 持込検査(普通車) | 2,300円 | 2,600円 |
| 持込検査(小型車) | 2,200円 | 2,500円 |
| 持込検査(軽自動車) | 2,200円 | 2,500円 |
持込検査とは、車を検査場へ直接持ち込んで受ける検査です。自分で持ち込む「ユーザー車検」もここに入ります。
13年目からは追加整備がなくても重量税だけで高くなる
見落としやすいのが、古い車の重量税です。エコカー減税の対象外の車は、新車登録から13年、18年を過ぎると税額が上がります。
| 車の種類(2年分) | 13年未満 | 13年経過 | 18年経過 |
|---|---|---|---|
| 軽自動車 | 6,600円 | 8,200円 | 8,800円 |
| 登録車 1t以下 | 16,400円 | 22,800円 | 25,200円 |
| 登録車 1.5t以下 | 24,600円 | 34,200円 | 37,800円 |
| 登録車 2t以下 | 32,800円 | 45,600円 | 50,400円 |
1.5t以下の登録車なら、13年を過ぎた時点で重量税だけで9,600円増えます。18年を過ぎると、13年未満より13,200円高くなります。
「13年経過」の数え方は、登録車と軽自動車で違います。
- 登録車:初度登録の年月から12年10か月以後に車検を受けると「13年経過」
- 軽自動車:初度検査の年から13年たった年の11月以後に車検を受けると「13年経過」
軽自動車の場合、2013年に初度検査を受けた車は、2026年11月1日以降の車検から13年経過の税額になります。初度登録・初度検査の年月は車検証で確認できます。
追加整備が出やすいのは消耗品。保安基準に関係するかで重さが変わる
追加費用の多くは、使えば減ったり劣化したりする部品から出ます。項目ごとに「車検の合否に直結するか」を整理しました。部品代や工賃は車種と店で大きく違うため、この記事では金額の目安を載せていません。
タイヤ:溝1.6mm未満なら不合格
国土交通省の告示で、乗用車のタイヤの溝は1.6mm以上と決められています。溝の中にある「スリップサイン」という出っ張りは、残り1.6mmの目印です。
スリップサインが出ていれば、交換しないと車検に通りません。一方、JAFは残り溝が4mmほどになったら交換を検討するよう案内しています。4mm前後で「推奨」と書かれていたら、合否ではなく安全面の提案です。
ブレーキパッド:減っていても検査時に止まれば通る
ブレーキパッドは、ブレーキを押しつけて車を止める部品です。JAFは「基準近くまで減っていても、検査時の制動力を満たせば車検は通る」と説明しています。
つまり、パッド交換は「推奨」として出ることが多い項目です。ただし、次の車検までに限界を超えるおそれがあるなら、どこかで交換が必要になります。「残り何mmか」を数字で聞くと判断しやすくなります。
ワイパー・ウォッシャー液:備え付けが義務の装置
保安基準の第45条は、ワイパー(窓ふき器)の備え付けを義務づけています。ウォッシャー(洗浄液を吹きかける装置)も同じ条文で義務になっています。どちらも、前面ガラスの視野を確保するための装置です。
拭き残しが多いゴムは、交換を勧められやすい項目です。替えゴムは自分でも交換できる部品なので、見積もりで出てきたら店の金額と通販の価格を比べる余地があります。
上は楽天市場で「ワイパー 替えゴム」と検索した結果の一例で、私は試していません。替えゴムは車種ごとに長さと形が違うため、適合表で確認してから選んでください。
発炎筒:備え付けは義務、期限は保安基準に書かれていない
保安基準の第43条の2で、乗用車には「非常信号用具」を備えることが義務づけられています。発炎筒が代表例で、基準を満たすLED式の非常信号灯もあります。
JAF Mateによると、発炎筒の有効期限はJISで4年と定められています。一方、保安基準の条文そのものには期限の定めがありません。
期限切れが不合格の理由になるかは、検査での扱いによります。気になる場合は事前に店に確認してください。JAFのQ&Aは、期限を過ぎると炎が小さくなり見えにくくなることもあると説明しています。いざという時に使えるかで考えると、期限内のものを積んでおくのが無難です。
こちらもLED式の非常信号灯を検索した一例で、私は試していません。購入するときは「車検対応」の表記があるかを確認してください。
ライト・オイル漏れ・ブーツ類・バッテリー:状態を見せてもらって判断する
次の4つは、同じ部品でも状態によって必須にも推奨にもなりえます。言葉の説明だけで決めず、写真や現物で状態を見せてもらうのが確実です。
- ライト:前照灯は保安基準で備え付けが決まっている灯火です。点かない・暗い・向きがずれているといった指摘なら、検査の合否に関わるかを確認します。
- オイル漏れ:「にじみ」なのか「漏れて垂れている」のかで、急ぎ具合が違います。どちらなのかを具体的に聞きます。
- ブーツ類:ドライブシャフトなどを覆うゴムのカバーです。破れていると、中のグリース(潤滑用の油)が飛び散る原因になります。
- バッテリー:弱り具合は測定器で数値として出せます。測定結果の数値と、交換を勧める理由を聞くと判断しやすくなります。
見積もりは「必須か推奨か」を1行ずつ聞けば削れる
追加費用で驚かないために、見積もりの段階でできることは5つあります。
1. 事前見積もりを書面でもらう
口頭の説明だけだと、後から金額が変わっても確かめられません。見積書には、法定費用・基本料(点検や代行の料金)・整備費用が分かれて書かれているはずです。整備費用の行を1つずつ確認します。
2. 各項目に「必須」「推奨」と書いてもらう
店によっては、見積書の時点で項目を分けてくれます。分かれていなければ、「この項目は車検に通すために必要ですか」と1行ずつ聞きます。必須の項目は、どの保安基準に合わないのかを聞くと根拠がはっきりします。
3. 車検中の電話に、その場で即答しない
入庫後に「追加で交換が必要です」と連絡が来ることがあります。金額と、必須か推奨かを確認してから答えて問題ありません。推奨の項目なら、いったん断って後日ほかの店で見積もりを取る選択もできます。
4. 推奨は「いつまでに」を聞いて予定に入れる
道路運送車両法の第47条で、車を保安基準に合う状態に保つ義務は使用者にあります。第47条の2では、基準に合わなくなるおそれがあれば必要な整備をすることも求めています。
推奨の項目を断るなら、「あと何か月・何km持ちそうか」を聞いてメモしておきます。次の点検やタイヤ交換のついでに直せば、工賃をまとめられる場合もあります。
5. 部品の持ち込みは事前に確認する
ワイパーゴムや発炎筒のように、通販で買える部品もあります。ただ、持ち込み部品の取り付けを受け付けない店や、取り付け料金が別になる店もあります。持ち込むなら、予約の時点で扱いを確認しておきます。
ユーザー車検は手数料の差より「点検を誰がやるか」で決める
ユーザー車検は、自分で検査場に車を持ち込んで受ける方法です。業者の基本料がかからない分、総額は下がります。
ただし、検査手数料はむしろ高くなります。持込検査は普通車で2,600円、小型車(5ナンバー)と軽自動車で2,500円です。指定工場のOSS申請(1,850円)より650〜750円高くなります。1.5t以下の車には小型車が多く、その場合の差は650円です。総額で大きな差が出るのは、手数料より業者に払う点検・整備の料金です。
もう一つの注意点は、車検に通っても点検整備が終わったわけではないことです。JAFは、車検は検査時点で基準に合っているかを見るもので、次の車検までの安全を保証しないと説明しています。中部運輸局も、検査時に点検整備をしていなければ、検査後すみやかに行って記録する必要があると案内しています。
ユーザー車検で浮くお金と、点検を別に頼む手間や費用を比べて決めるのが現実的です。
受けられる時期は満了日の2か月前から
2025年4月1日から、車検は有効期間が切れる日の2か月前から受けられるようになりました。2か月前に受けても、残りの期間は失われません。
余裕を持って見積もりを取れば、推奨の項目を別の店と比べる時間も作れます。国土交通省は、年度末を避けて余裕を持って受けるよう呼びかけています。
まとめ:削っていいのは「推奨」、削ってはいけないのは法定費用と「必須」
- 重量税と自賠責は全国共通。指定工場に頼んだ場合の法定費用は、2026年11月時点で1.5t以下の登録車(エコカー外)が45,010円、軽自動車が27,110円
- 検査手数料は受け方で違い、持込検査やユーザー車検は650〜750円高い
- 2026年は自賠責(11月1日〜)と検査手数料(4月1日〜)の両方が上がった
- 13年・18年を過ぎた車は、重量税だけで数千円〜1万円以上高くなる
- 追加整備は「必須」と「推奨」に分けてもらい、推奨は時期と依頼先を自分で選ぶ
- 推奨を断るなら、いつまでに直すかを聞いて記録しておく
見積もりの金額が高いと感じたら、まず「必須はどれか」を聞く。それだけで、払う金額の大部分は自分で決められるようになります。
参考にした情報
- 国土交通省 2026年5月1日からの自動車重量税の税額表(継続検査等):https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/001884517.pdf
- 国土交通省 エコカー減税・自動車重量税の照会案内:https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_fr1_000076.html
- 金融庁 第153回自賠責保険審議会 資料1「自賠責保険基準料率改定の届出について」(2026年4月):https://www.fsa.go.jp/singi/singi_zidousya/siryou/20260430/01_153.pdf
- 国土交通省 中国運輸局 自動車の登録・検査の法定手数料変更について(令和8年4月1日):https://wwwtb.mlit.go.jp/chugoku/00001_01070.html(手数料一覧PDF https://wwwtb.mlit.go.jp/chugoku/content/000371136.pdf)
- 国土交通省 報道発表「来年4月より、車検を受けられる期間が延びます」:https://www.mlit.go.jp/report/press/jidosha02_hh_000645.html
- 国土交通省 道路運送車両の保安基準の細目を定める告示 第89条(走行装置):https://www.mlit.go.jp/jidosha/kijyun/saimokukokuji/saikoku_089_00.pdf
- e-Gov法令検索 道路運送車両の保安基準(第43条の2、第45条):https://laws.e-gov.go.jp/law/326M50000800067
- e-Gov法令検索 道路運送車両法(第47条、第47条の2):https://laws.e-gov.go.jp/law/326AC0000000185
- JAF Mate「車検と定期点検は何が違う?」:https://jafmate.jp/car/sp_20220610_10.html
- JAF Mate「三角表示板と発炎筒の使い方とは?」:https://jafmate.jp/safety/what-would-you-do_20250407.html
- JAF クルマ何でも質問箱 高速道路で事故や故障が発生したら:https://jaf.or.jp/common/kuruma-qa/category-accident/subcategory-traffic-accident/faq103
- 損害保険料率算出機構 自賠責保険 基準料率届出のご案内(2026年4月30日):https://www.giroj.or.jp/ratemaking/cali/pdf/202604_announcement.pdf
- JAF クルマ何でも質問箱 タイヤ交換の目安:https://jaf.or.jp/common/kuruma-qa/category-inspection/subcategory-tire/faq-c031
- 国土交通省 中部運輸局 点検整備の説明:https://wwwtb.mlit.go.jp/chubu/seibi/tenkensetumei.html
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